2021-06-25
明日からまた1週間が始まろうという日曜日は希望よりも憂鬱が先に立つ。昔から変わることがない。そんな暗い気持ちをやわらげてくれるのが、日曜日夕方の「サザエさん」である。勝手に番組名を持ち出して関係者に申し訳ないがお許しいただきたい。
気持ちがなごむ理由を考えてみた。ひとつは、なんといっても、サザエさんを始めとしたあの登場人物たちの人柄だろう。ただひたすら明るいサザエさん、テストの点数が悪くてもほとんど落ち込まないカツオくん、「バカもん」と怒鳴ってもあとに尾を引かない波平父さん、しっかり者のフネお母さん。ほかのキャラクターも性善説に立つ人ばかりである。昭和の空気だ。もちろん昭和のすべてが明るく楽しかったわけではないが。
商店街がある。御用聞きが来る。携帯ではなく固定電話があり、卓袱台を囲んでの3世代同居の食事風景がある。時代は昭和である。人とのつながりが緩いながらもしっかりとあった。固定電話にすら馴染みのない現在の子どもたちにとって昭和は歴史の一部分だ。違和感があるのは当然だろう。しかし、えびおじさんは懐かしい昭和にゆったりと溶け込んでいくのである。
もう一つ安心するのは、時代劇の勧善懲悪に通じるものが番組に感じられることである。悪いことやズルは絶対許さない、いわば昭和の教養みたいなものがある。コソ泥や押し売りは出てきてもオレオレ詐欺みたいに人をだますあくどいヤカラは出てこない。最後には押し売りも諭(さと)されてスゴスゴと帰って行くのである。やはり昭和である。
しかし、カツオくんの成績はなぜいつも芳しくないのだろう。サザエさんの弟だからという理由はなんとなく分かるが、妹のワカメちゃんはしっかり者だし、両親も実直で謙虚、頭も良さそうだ。75点は取れると思うのだが。しかし、カツオくんには、あの手この手で生き抜いていく生活力が感じられる。多少成績が悪くても健康でワンパクで存在感を示せた昭和の少年である。
サザエさんの親たちと同居するマスオさんは心やさしい人柄である。妻の親と同居する「マスオさん現象」という言葉も生まれ、いつの間にか世の中に定着している。
最後に、この番組への出演依頼がえびおじさんにはまだ来ない。海の生き物つながりで、奄美大島で車えびを養殖している遠い親戚という設定はどうだろう。海老原さんか海老沢さんか名前は準備してあるのだが。背中を丸く、いや首を長~くして待っていよう。サザエさん一家にパワーをもらいつつ明日からの仕事に新たな決意のえびおじさんである。
<えびおじさん>
懐かしの電話機 「はい、えびおじさんでございま~す!」