2021-01-05
宇検村は奄美大島の南西部に位置する。村の真ん中に細長い焼内湾を抱き、湾を囲むように、奄美で一番の高さを誇る湯湾岳などの山々が連なっている。湾は西の方で東シナ海につながっている。焼内湾と山々の間に14の集落があり人口は合わせて1600人と少しである。宇検村は、地形の形状もあってか奄美大島の奥座敷と呼ばれている。風土が人をつくるともいうが、山々に囲まれ内海に面した穏やかな土地の人々は、皆、心やさしい。
冬は山が北風から人々を守ってくれる。今の季節、畑や庭のタンカンが徐々に色づきつつある。2月に入ると収穫が始まる。世界のすべての柑橘を味わったわけではもちろんないが、えびおじさんは、奄美のタンカンが世界最高の柑橘だと、毎年、心待ちにしている。そして、ひと足先に桜の季節の始まりでもある。奄美では桜といえばヒカンザクラだ。ソメイヨシノはまず見られない。ヒカンザクラの朱色の花に蜜を求めてメジロがたくさんやって来る。器用に宙返りをして花に吸いつく。
春になると、そろそろとハブが出てくるかもしれない。ハブは陽の光に弱いらしく夜行性である。どんな強者にも弱点があるものだ。夜間外出をしない?えびおじさんはまともにハブを見たことがない。宇検養殖場にはハブ取り名人が多くハブに出会うことを楽しみにしている人間が多い。
畑もにぎやかになる。宇検集落ではユタカおじが一輪車を押して畑に向かう。朝から晩まで働き詰めだ。「ユタカおじ、あまり、無理するな!」 畑では数頭の山羊🐐がおじを待っている。
夏が近くなると、いろいろな鳥たちが渡ってくる。以前もお話ししたがアカショウビンたちの輪唱はまことに聞きごたえがある。朝、明るくなるのを見はからうように鳴き始める。自分たちのすばらしい音楽をいかにも人間たちに誇っているかのようだ。「お前たちはできるかい」と問いかけている。えびおじさんは脱帽である。
台風には用心である。大雨も怖いが風も怖い。奄美大島の東側を通るか西側かで風向きがまったく異なる。風が当たるか当たらないか、そして、風の強さは本土の比ではない。30~40%くらい激しいような気がしている。さいわい、ここ数年、大きな被害は出ていない。
秋は豊年祭の季節だ。各集落の真ん中にある土俵とその周りが会場である。敬老会と芸能と相撲と盛りだくさんの祭りである。これに合わせて島外からの帰省客も多い。それほど楽しみな祭りなのである。残念ながら2020年は新型コロナウイルスの感染防止のためすべての集落で中止となった。2021年は大丈夫と思いたい。
四季折々に地味豊かな宇検村である。
2020年は世界規模でたいへんな年だった。1年を表わす漢字は「密」に決まった。今年はぜひ「穏」か「治」か「安」であって欲しいものである。2021年はオリンピック・パラリンピックの年だが、奄美にとっては「世界自然遺産登録」の可否が審査される年でもある。しかし、これらが開催されるかは新型コロナが収まるかどうかにかかっている。コロナ以外にも温暖化や大国同士の対立など問題山積の地球だ。平和な年になることを祈念しつつ、今宵も黒糖焼酎で。おっと、その前にビールで下地を作って、と。カンパイ🍻
<えびおじさん>