2020-09-07
小学時代の夏休みの日記に「今日は気温が30度まで上がって、とても暑かった」と書いていた記憶がある。ということは、昭和30年代の鹿児島の夏の最高気温は、まず28~29度前後で、30度になることが珍しかったということになる。今や、このレベルではない。今年の夏などは全国的に35~36度が当たり前になってしまった。こうなったのは地球温暖化に伴う気候変動によるものが大きい。「こんな地球に誰がした?」と問いかけたくなる。もちろん元凶は人間たちだ。便利さを追求するあまり地球に多大なストレスを与えてしまい、結果的に自らの首を絞めてしまっている。こんなつもりではなかったはずだ。より良い未来を子どもたちに届けることがえびおじさんたちの責務なのだから。
さて、小中学生のみなさんは夏休みの昆虫採集はうまくいっただろうか。実は、えびおじさんの知り合いに、虫の大好きな女性がいる。虫女(むしじょ)とでも言うべきか。大好きなだけあって、虫のことにとても詳しい。街で見かける蝶々や昆虫の名前を何の苦もなく言い当てる。びっくりする。
虫の大好きな女性R子さんは、子どものころ、親戚のおじさんたちに山によく連れていかれ、自然、とりわけ、鳥や昆虫に興味を示す少女だったそうだ。
大人になってからもその気持ちは衰えることがなかった。そして、息子さんが小学生になると一緒に昆虫採集を楽しむようになり、虫への思いはさらに勢いを増すようになった。それは、まるで水を得た魚のようだったと本人が語る。
昆虫の世界に踏み込んで10数年となる。現在は、鹿児島昆虫同好会に所属し、季節ごとの虫たちの出現を楽しむ生活である。
平安文学の「虫愛<め>づる姫」ではないが、この虫大好き女性が、夏休みを利用して鹿児島市から奄美に虫を愛でる旅にやってきた。本人によれば奄美は虫の宝庫だという。奄美はこれまでも訪れており今回が3回目の訪問だ。令和版「虫愛づる姫の奄美探訪記」である。 <えびおじさん>
奄美 甘みの潮風 <Ⅰ>
えびおじさんから、この欄への投稿を依頼された。遠慮していたが、この夏の奄美での体験は、忘れることのできない素敵な思い出となったので、引き受けることにした。わずか数週間前のことだが、奄美のことは印象深く、今、こうやって懐かしくキーボードを叩いている。
実は、昨年、奄美大島を訪れる予定だった。しかし計画していた8月には次々と台風がやって来て、結局、断念せざるを得なかった。今年はというと「コロナ」である。またまた、行く手を阻む大きな壁である。しかし、悩んだあげく、細心の注意を払うことで奄美へ飛び込むことにした。日程は、8月10日~13日の3泊4日である。奄美は9年ぶりである。
今回の奄美探訪は宇検村が拠点だ。ここに宿を構えた。まず、宇検養殖場を見学した。私は鹿児島市で不動産関連の会社で事務を担当しているが、えびの養殖というまったく別の事業の見学はとても新鮮だ。社会科見学もくっついての奄美探訪だ。そもそも、えびも生き物である。関心の埒外<らちがい>というわけではない。初めて訪れた養殖場のあまりの広さに驚いた、7万7000㎡あるそうだ。現在は、水槽の中で、車えびの赤ちゃんの育成中で、毎日、毎日、少しずつ大きくなっている。
宇検養殖場を案内して下さったのはM場長だ。少し面識がある、といった程度だったが、何か一脈通じるものがある。そもそも、M場長も生き物が大好きな人だ。ヒマがあれば、しょっちゅう湯湾岳に車を走らせている。夜と朝とでは、見られる動物が違うらしく、夜、行って、また翌朝も行くといったぐあいである。共通の趣味は、コミュニケーションのハードルを低くする。年齢も経歴も関係なく、まるで昔からの友人だったかのように接することができる。
スケジュールはかなりハードだった。大げさに言うならば、滞在の4日間で1か月分ほどのスケジュールをこなしたという感じだ。なにしろ、見られるものは、全部見ておきたいという思いだったから。
到着したその日、日本最大の蝶「オオゴマダラ」の飼育施設を訪れたのを皮切りに、その晩からさっそく湯湾岳を中心にナイトツアーである。案内してくれるのはM場長である。眠る間を惜しんでの活動である。「アマミヤマシギ」「アマミノクロウサギ」「コノハズク」の姿を目にして大興奮だ。本土では見られない生き物たちだ。特に、国の特別天然記念物のアマミノクロウサギは、前回来たときは見られなかったのだ。
翌日からは奄美各地の自然めぐりである。「湯湾岳」「フォレストポリス」「マテリアの滝」など、散策するだけで十分に自然を満喫できる場所である。また住用町にある「マングローブ林でのカヌー体験」、宇検村の焼内湾での「シュノーケリング」、奄美市の「博物館」等の施設めぐりも楽しかった。シュノーケリングでは宇検集落のUさんの小型漁船に乗せていただき、枝手久島周辺の美しいサンゴ礁の世界を楽しんだ。海も最高だ。サンゴ礁の間を泳ぎ回る熱帯魚たちが、虫に劣らず、私の五感をくすぐってくれた。
私の趣味でもある昆虫採集は、大和村では自然保護のため禁止されている。特に「フォレストポリス」は希少な生き物たちが保護されており採集できない。代わりにカメラを持って、次々と出現する奄美のチョウやトンボの撮影に夢中になった。またそこでは、奄美に来て初めて「ルリカケス」の姿を見ることができた。
「マテリアの滝」。ここは今回が初めてだが、涼しげな滝の風景に重なって「リュウキュウハグロトンボ」の舞う姿や、ひっそりと「アマミルリモントンボ」が止まっている姿を見ることができた。
また大和村の山道では「ヒカゲヘゴ」をあちらこちらで見ることができる。奄美を感じる道である。車を停めるたびに、そこに、奄美特有の何かが目に留まる。植物だったり鳥類だったり、爬虫類だったり、アマミノクロウサギの糞だったり。まさに奄美だ!
次回は「奄美 甘みの潮風 <Ⅱ>」をお伝えします。 <虫愛づる姫・R子>