活車えび宇検養殖株式会社

宇検だより

まかんば

2020-08-18

明日か明後日には台風がやって来るかも、という8月の初旬、宇検村の焼内湾で夜釣りを楽しんだ。宇検集落の港から瀬渡し船で10分。湾内に浮かぶ、奄美でいちばん大きな無人島、枝手久島のすぐ近くに、大きなイカダが設<しつら>えてある。ここに陣取って、村内の方々10名と一緒の釣りである。

夕方、波は穏やかで潮風が心地よい。湾のすぐ外には東シナ海が広がっている。はるか向こうには、積乱雲が横に連なっている。テレビでよく見かける、南の海のあの光景である。

陽がかなり傾き始めている。これまで夜釣りの経験はないが、同行の方の話では、ちょうど今夜あたりは潮の具合がよく、魚の回遊が活発になって、入れ食い状態になるかもしれないとのことである。

糸を垂らす。水深30メートルくらいである。おもりが海底に着いたら少し巻き戻す。すると、またたく間にアタリが来る。ムロアジである。20センチ級のものがどんどんかかってくる。えびおじさんは、どちらかというと、海幸彦ではなく山幸彦の部類に属するから、釣りはあまり得意ではない。小さなアタリだと気づかないことがしばしばである。横で眺めているベテラン釣り師が、こちらの微妙なアタリに気づいてすぐ教えてくれる。やさしくも厳しい言葉が飛ぶ。「アタリが来ているのに!気がつかないの!?」また、こちらが、のんびりしていると「まかんば!」と強い調子で叱責する。「リールを早く巻け!!」という意味だ。以前、この欄に書いた「せんば、やらんば、きばらんば」の「釣り版」である。ほとんど初心者のえびおじさんは「分かりました~!」と素直に従うしかないのである。

釣りの技術はともかく、ふだんの行いが良いせいか<?>入れ食いとなった。ご一緒した近所のご夫妻とえびおじさんの3人で、ムロアジやメアジ合わせて150尾の大漁である。魚の大小はあるものの、こんなに釣れたのは生まれて初めてである。ほかのみなさんも大漁に沸いている。

釣りを終えて港に帰り着いたのは夜の9時。釣り人たちの真上に満天の星空が広がっている。大漁を祝してくれたのだろうか、流れ星がすーっと1個流れていった。

翌日の夕食から数日間は魚三昧<さかなざんまい>である。ご夫妻が作って下さった、メアジの南蛮漬けとフライ、ムロアジの一夜干し、メアジの頭と骨で出汁<だし>を取った素麺などなど、だ。絶品である。これらの肴を前にビールや焼酎が進まない方がどうかしている、と言い訳しつつ、黒糖焼酎のロックは早や5杯めである。ご夫妻との宴<うたげ>を嗅ぎつけて近所の老若もやって来る。えびおじさんの釣りの自慢話は尽きるところがない。こうやって、宇検の夜は更けてゆくのである。

海の幸である新鮮な魚を骨まで食べ尽くし、えびおじさんの体の調子はすこぶる快調。焼内湾の豊かな恵みに感謝感謝である。   <文:えびおじさん>

※「メアジ」は聞きなれない方も多いと思うが、「マアジ」に比べて目が大きいのでこの名前がある。英語名も「Bigeye scad」となっている。図鑑によると、西日本や南日本でよく獲れる。クセや臭いがなくて味も良く、おいしい出汁が出るとのこと。まさしく、その通りのおいしさだった。

大漁を予感させるような大きな虹が出た。ご夫妻の手による料理の数々:メアジのフライ、ムロアジの一夜干し、メアジの出汁で作った素麺

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