活車えび宇検養殖株式会社

宇検だより

新型コロナ

2020-04-27

前回紹介した、奄美の世界自然遺産<正式には「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」>の登録の可否は、6月に中国で開催予定だった世界遺産委員会が延期になってしまったので、しばらくずれ込みそうである。残念ながら、この世界情勢ではしかたがない。

えびおじさんは昭和27年生まれである。戦争が終わり徐々に世の中が落ち着いてきていた。小さい頃、テレビはまだなかったが、不自由でもなかった。交通手段は、バス、自転車、汽車(電車ではない)徒歩である。食事もぜいたくなものはなかった。ご飯と味噌汁、ちょっとしたおかず程度だった。肉はまず食べたことがなかった。魚はよく食べた。ピザ、焼き肉などといった外食ものは成人してからである。ぜいたくはできなかった。世の中に、ぜいたくそのものがなかった。穏やかな日本であったと記憶している。

そんな平和な時代に生まれて、高度成長を味わい、少々の不景気はあったものの、このまま、戦争などの危機的なことを経験することなく人生を全うすると思っていた。ところが、この新型コロナウイルス騒ぎである。人間の幸不幸の総和は最終的には帳尻が合うようになっているのだろうか。ひょっとしたら「苦労が足りない。一度くらいは危機的な経験をしろ」との神の命令かも知れない。

三密(密集、密閉、密接)がいけないそうだ。「三密より壇蜜だ」などと三遊亭小遊三ばりのジョークをカマシていたのもつかの間、今となっては、そんなことを言うのもはばかられる。今は「断密」だそうだ。つまり「密を断つ」ということ。商店街が掲げる「地域密着営業」という言葉も今は使いづらい。

たまたま、今年の1月17日<金>の新聞が手元にあった。読んでみると、一面に大きく取り上げられているのは、25年前のこの日に発生した「阪神・淡路大震災」を振り返る記事である。新型コロナウイルスは、と探すと、1面にはない。2面にわりと大きく掲載されているものの、まだまだ深刻な書き方ではなく緩やかな扱いである。「国内で初確認、SARSに比べ重症度低い、ヒトからヒトへの感染があっても限定的」とのレベルである。武漢の集団発生はまだ対岸の火事だったのだ。それが、あれよあれよという間である。今では、世界中を巻き込んでの第三次世界大戦である。相手は人間や国家ではなく、対ウイルスである。無差別であり、貧富の違いやイデオロギーも関係ない。人間相手なら、話し合いもできるがそうもいかない。

コトが起きると、今まで知らなかった背景や事情があぶりだされてくる。

発生地の中国・武漢の名前は知っていたが、街の様子など知る由もなかった。実は、人口1000万人の大きな工業都市だったのだ。驚いたのは、日本は、野菜や機械の部品などを大量に中国から輸入していることである。中国の工場が稼働しないと、あらゆることが麻痺してしまうらしい。中国が「世界の工場」だということを改めて認識した次第である。世界の国々はかなり中国に寄りかかっているのだ。薬の原料などもそのようだ。南西諸島で張り合っていて、いつ軍事衝突があるかもしれないという日中間の政治的な緊張とは裏腹である。他国任せにしない、自前の産業育成の必要性を改めて感じた。また、歴史的なことも知るようになる。100年前のスペイン風邪は、第一次世界大戦と大いに関連があり、兵士の多くがこのウイルスで亡くなり、また、戦争の終結を早めたともいわれている。

知らなかった新しい言葉も増えていく。「オーバーシュート」「クラスター」「ロックダウン」「ソーシャルディスタンス」などなど。新しいカタカナ言葉が、またまた、えびおじさんを悩ます。日本人は順応力が高いと言うべきか、これらの言葉を、以前から知っていたかの如く、今や、当りまえに使っている。えびおじさんも例外ではないのだが・・・

しかし「巣ごもり消費」や「需要蒸発」とは言い得て妙である。

去年の今頃は、平成から令和へと年号が変わって時代が動き、世の中がウキウキしていた。1年後にこのようなことになるとは想像もしていなかった。東日本大震災で日本人の意識が変わったと言われるが、このコロナ騒ぎの後は地球規模で世の中が変容するような気がする。

コロナ騒ぎで暗い世相になった。しかし、外に目を移せば、クスの木が新緑をまとって春の装いである。早や、薫風の時季だ。いつのまにか季節が動いている。桜は散ったが、今度は山にタケノコが顔を出して、えびおじさんを待っている。

宇検養殖は、東シナ海に面した奄美の自然のなかにあり、人の出入りはさほど多くはない。それでも油断は禁物である。さきほどの、断密、消毒、部屋の換気、朝の検温、手洗い励行などを心がけている。ウイルスは宿主(人間)が運んで来る。昔々は、ウイルスは数年かけて世界を一周したと聞く。しかし、交通が発達したこの時代は、例えば、東京から奄美は飛行機で数時間だ。奄美大島の自治体は、島外からの来島を自粛するようにお願いしている。観光が大きな産業である奄美にとって大変な痛手だ。しかし、本土に比べて医療体制に余裕がない奄美大島にしてみれば、このタイミングで人の動きを制限し予防することは、残念ながら、しかたがない。

100年に一度といわれるくらいの災厄である。予防を確かなものにして、この事態を乗り切り、そして、災いを福に転じさせたい。えびおじさんからもどうかお願いしたい。収束した暁には、豊かな自然や新鮮なフルーツ、温かい人情が来島の方々を待っている。

えびおじさんが考えた 5・7・5・7・7である。

「窓開けて、検温・マスク、手を洗い、消毒済ませて、よし完璧だ!」

これらの注意ごとが日常の行動規範になってきた。しかし、こんなに、日に何度も手を洗うのは生まれて以来である。指紋が磨耗しないか心配だ。  <文:えびおじさん>

 

奄美から鹿児島への飛行機の中から見た夕焼け<下は雲>

 

一覧に戻る→