活車えび宇検養殖株式会社

宇検だより

海のダイヤ

2020-02-28

世の中には、赤いダイヤ、黒いダイヤと、ダイヤの名称を添えて比喩的に呼ばれるものがある。宝石の中の宝石であるダイヤにあやかって稀少性や高価さを表現しようとするわけだが、どんなものがあるのだろう。

例えば、黒いダイヤには、石炭がある。蒸気機関車も姿を消し、今はあまりなじみがなくなってしまったかもしれないが、石炭は、石油が主流になる前は日本経済にとって非常に重要なエネルギー資源だった。小学校の教科書で筑豊炭田とか常磐炭田とか覚えさせられた記憶がある。筑豊には、今でも「黒ダイヤ」という名のお菓子がある。

赤いダイヤには、例えば、小豆(あずき)があり、先物取引相場を舞台とした小説にもなっている。胡椒(こしょう)は古くから珍重されヨーロッパ諸国のアジア進出のきっかけにもなった。上質の胡椒は、黒いダイヤ、赤いダイヤと、今でも呼ばれているらしい。

資源が少なくなって、近頃、マスコミをにぎわすのが、ウナギの稚魚であるシラスウナギだ。これは白いダイヤというより透明のダイヤと言ったほうが似合いそうだ。鹿児島県は日本一のうなぎの産地だが、今年は例年よりも捕獲量が多いそうである。

<黒いダイヤ>

黒トリュフ、石炭、キャビア、胡椒(こしょう)、クロマグロ、オオクワガタ、黒ダイヤという名の菓子

<赤いダイヤ>

小豆(あずき)、イクラ、ミナミマグロ、コーヒーの実、サクランボ、ノドグロ

<白いダイヤ>

シラスウナギ、手作りの塩、白トリュフ、吉野本葛、アワビ、白ダイヤという名の菓子

<黄色いダイヤ> 数の子、硫黄

<森のダイヤ>  松茸

さまざまな、比喩的なダイヤがある。消えてしまったもの、新しく登場したもの。比喩的なダイヤは時代の消長を示しているのかもしれない。名前は知っていてもお目にかかったことのないものもある。また「こんなものまで」とか「そうかな?」というのもある。関係者の思惑も見え隠れする。

オオクワガタはどこでも見られるのではと思っていたら、確かに少ないようだ。宇検養殖場の前門洋一<まえかど よういち>場長は、虫、爬虫類、鳥、魚などの生き物全般に詳しい男だが、彼によれば、鹿児島では霧島温泉付近にしかいないということである。やはり稀少なダイヤなのだ。

宝石の類にはなんの興味もなく、そういったものにトンと無縁の武骨なえびおじさんが、なぜ、比喩的なダイヤに興味を持ったか。それは、車えびが、おこがましくも、稀少なダイヤのように思えるからだ。

宇検養殖では、若い従業員たちが、毎朝、暗いうちから養殖池の車えびを取り上げる。前日の夕方にカゴを沈めて、その中に車えびをおびき寄せるのである。広い池だ。一日の取上げ量は数万尾に上る。

大きさ別に仕分けるが、作業場で明かりに照らされた車えびたちの姿は壮観である。透明感のある体に、黄色がかった褐色の縞(しま)模様を身にまとい、まるで宝石のように思える。えびおじさんは「ブラウン(褐色)ダイヤ」という名前はどうかと考えた。しかし、えびは火を通すと赤くなるから「赤いダイヤ」じゃないかとおっしゃる方があった。そして、また、「ブラウンダイヤ」は同じ名前の本物のダイヤがあったのだ。

宇検の車えびは昨年の夏はまだ稚えびだった。形はみごとに車えびだが、1センチほどの赤ちゃんだった。それが、今では20センチほどに成長し縞模様もくっきりしている。美しい宇検の海の恵みを受けて豊かに育ってくれた。これは、まさに「海のダイヤ」だ。私はこう呼ぼう。

しかし、ひょっとしたら、海の産物のなかで、すでに「海のダイヤ」を名乗っているものがあるかもしれない。そうであるならば、ぜひ仲間に入れていただきたい。

「海のダイヤ」たちは、今や、大きく成長した。ピチピチと跳ねる姿はいとおしく、大きく育った姿は誇らしくもある。働く若者たちの大きな励みともなっている。

大きさ別に分けられて箱詰めにされた「海のダイヤ」は全国各地の市場に向けて運ばれていく。奄美空港まではトラックで、それから先は飛行機である。水の中しか知らない「海のダイヤ」は空の浮揚感を楽しんでいるかもしれない。

ダイヤの力を借りるなら、それに恥じない、相応の車えびでなくてはならない。えびおじさんたちは心を新たに養殖業に勤しんでいる。

美しい海や山の奄美は、世界自然遺産登録まぢかである。<文:えびおじさん>

 

波おだやかな焼内湾(やけうちわん) 真ん中に枝手久島

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