活車えび宇検養殖株式会社

宇検だより

潮風にいだかれて

2019-10-30

都会のことはよく分からないが、地方の自治体は、こぞって、町おこし、村おこしに熱心である。背景には人口減少や少子高齢化などの問題がある。課題の解決方法として住民の協力はもちろんだが、地域外からの意見が大いに参考になる。例えば、外部の力を活用する「地域おこし協力隊」という制度がある。

人口1700人ばかりの小さな村である宇検村。宇検村にも「地域おこし協力隊員」がいる。今回、紹介するのは、3年前に宇検村にやって来た丸山耕市さん59歳である。地域おこしにもいろいろな仕事があるが、丸山さんは情報発信の役目を担っている。

丸山さんが全国の自治体のなかで宇検村を選んだ決め手は「潮の香り」だという。宇検村に来る前に住んでいたのは滋賀県甲賀市である。近くに、日本一の湖、琵琶湖が広がっている。広々とした風景である。しかし、丸山さんは飽き足りなかった。そこには「潮の香り」がなかったのである。

丸山さんは瀬戸内海の小豆島で生まれた。レモンとオリーブと壷井栄の「二十四の瞳」の島である。15歳で島を離れ、高校、大学、社会人と、ずっと都会で暮らしてきた。しかし、心の中には、いつも、少年時代を過ごした小豆島と海があった。

都会の生活に息苦しさを感じていた丸山さんは一念発起して宇検村の地域おこし協力隊に応募した。仕事で一度だけ訪ねてきたことはあったが、ほとんど縁はなかった。やってきたのは3年前のことだ。単身赴任である。

丸山さんは大学でインテリアデザインを学び、社会人になってからは、さまざまな企業の商品企画やプロモーション活動を仕事にしてきた。また、行政の観光政策や産業振興計画にも手腕を発揮してきた。宇検村に来てからは、役場の産業振興課などと連携しながら村外への情報発信に努めている。観光協会のウエブサイトやパンフレットの制作、地元放送局が主催する、ふるさとCMコンテストへの応募など多彩である。

丸山さんは情報発信の手段として、商品のネーミングの大切さを訴える。たとえば、宇検村は新鮮なフルーツが豊富なところである。しかし、これまでPR活動があまり活発ではなかった。他の後塵を拝しがちだった。これでは、せっかくの味が埋没してしまう。ネーミングで差別化を図ろう。タンカンジュースにつけた名前は「濃いに恋して」である。また、最近では、村内の平田(へだ)地区のタンカンに「オウシャオロウ」と命名した。フランス語のような響きを持つこの言葉は「どうぞ(召し上がって)」の意味を持つ地元の言葉である。丸山さんがブランディングの手法を伝授し、地区内の有志たちが侃々諤々(かんかんがくがく)の議論の末、決定した。丸山さんにも有志たちにも、頭一つ抜け出さねば、の気持ちが強い。

丸山さんの地域おこし協力隊としての役目は9月で終了し、10月からは、同じく役場の保健福祉課と連携し、地域包括支援事業コーディネーターとして、引き続き村内に留まる。新規事業の手伝いである。丸山さんは、あくまでも主役は村民であり、自分の役目は応援であると心得る。元々そこにあるものを壊さずに、ひと手間加えてさらに良くしたいという思いだ。また、住民の悩みへの相談にも乗りたいと考えている。かつて、大学や専門学校の学生相手に「やってみよう。できるよ。」とアドバイスしてきた。新規事業であれ、悩みの相談であれ、無理のないゆったりとした前進をめざしている。

丸山さんは還暦を機にさらにパワーアップしようとしている。元気のみなもとは潮風だ。瀬戸内海の内海のおだやかな風と異なり、外海の東シナ海のそれはかなり荒っぽい。しかし、その猛々しさはむしろ癒しであり、丸山さんの気持ちにしっくりと来る。潮風に心も体も浸すのである。(文:えびおじさん)

まことに蛇足ながら、えびおじさんは、風邪もひいていないのにクシャミや咳が出る。ひっきりなしだ。「加齢に伴うアレルギー性鼻炎」と自身でかってに病名をつけている。季節の変わり目、特に冬場に向けての今の時期がつらい。ところが鹿児島市から宇検村にやってくると、これがピタリと治まるのだ。宇検の甘い潮風の恩恵である。

丸山さんが作成した宇検村のパンフレットから、枝手久島の俯瞰。

「濃いに恋して」のノボリ旗

子どもたちへの授業風景、 「ロゴマーク」について

 

 

 

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