活車えび宇検養殖株式会社

宇検だより

奄美の夏の思い出

2019-10-09

えびおじさんの仕事仲間でデザイナーの淵上冴己(ふちがみさき)さんがこのブログに寄稿してくださった。家族と奄美で過ごした夏の思い出である。

「プルルルル」 携帯に着信があった。 8月10日のことである。 わたしは奄美大島の北東部、笠利<かさり>町に滞在していた。 2つの台風に挟まれて、それはそれは蒸し暑い夜だった。 画面を見ると、いつもお世話になっている「えびおじさん」からである。すごい偶然だ。 えびおじさんといえば、何年も鹿児島市と奄美を往復されている「ダブル生活のプロ」である。 奄美に来ることは誰にも伝えていないけれど、奄美の神様がえびおじさんを導いてくれたのかしら。 奄美のおいしい店でも教えてもらえるかもしれない。 わくわくしながら電話をかけ直した。「お~い。今日の会合はどうしたの?」 なんと、鹿児島市での約束をすっぽかしていたのである。「す、すみません!来週と間違えておりました!」 私は自分の顔が青ざめるのを感じながら、真っ暗な北の海に向かって何度も頭を下げた。心優しいえびおじさんは、私のどうしようもないミスに、怒るどころか、ブログに寄稿する機会まで与えてくださった。 奄美に5日間滞在して感じたことを、感謝の心を込めて書かせていただこうと思う。

さて、30年間、鹿児島市に生まれ育ちながら、奄美大島の地を踏むのはこれが初めてである。 あっちへ観光、こっちのビーチで海水浴、ドライブして、あれを食べて・・・と、いろいろと企んでいたにも関わらず、台風9号と10 号にぶちあたってしまった。 う~ん。これでは海水浴は難しい。 なにせ、子供たちをぞろぞろ引き連れての大移動である。 彼らの一番の楽しみは、きれいな海でひたすら泳いだり生き物を見つけたりすることだ。 かくして「浜歩きの旅」となった。 カメラのレンズが、あっと言う間に、潮で白く曇るような強風の中、太陽の顔色をうかがいながら、滞在時間のほとんどを砂浜でぶらぶらし て過ごした。残念な結果だが、これはこれで、いろいろな発見があって楽しかった。

▲強風の中、浜拾いに夢中の末っ子。

▲曇り空でも美しい奄美の海。笠利<かさり>の浜は波が比較的大きい。

みなさんは「ビーチコーミング(Beach combing)」という言葉をご存知だろうか。 海辺に打ち上げられた、漂着物や貝殻、石などを観察したり、拾ってコレクションにして楽しむことだ。凝った人は、 それだけで美術作品を作りあげて販売したりするらしい。私も最近になってその言葉を知ったのだ。砂浜でお気に入りの 貝を拾って、そっと引き出しにしまっておく。そのような懐かしい記憶は誰にでもあるのではないだろうか。

台風の前後は波が高く、いろんな漂着物が見つかる。「 龍涎香(りゅうぜんこう)」なるものを台風のあとに探しに行く・・・というエピソードを本で読んだことがある。龍涎香はクジラの体内でできた結石で、非常に高価な線香の原料になるらしい。昔の人は、それを探し当てて一攫千金を狙ったという。 これも、ビーチコーミングの成果である。 他にも、瑪瑙(めのう)や珍しい貝などのお宝もあるらしい。 ただ、私たち、ちびっ子連れのおめあては、もっぱら動くもの。 その一例をご紹介したいと思う。

▲ツノメガニ。 穴をみつけて、50センチほど掘ると出会える。

▲殻を見つけられずに困っている「オカヤドカリ」。おそらく天然記念物の「ムラサキオカヤドカリ」だ。 「人間は、ヤドカリに必要な貝を持ち帰り、ゴミを残していく。」という、以前見かけたコピーがずっと心に残っている。 近年、貝が減って、しかたなくペットボトルの蓋(ふた)をすみかにしているヤドカリも多いらしい。 ビーチコーミングは楽しいが、できるだけ彼らの邪魔をしないように楽しみたい。

今、ここで紹介したのは、広大な奄美の自然の中で出会えるほんの少しにすぎない。まだまだほかにも、植物、鳥、魚なども、本土とはまったく違う豊かな生態系を観察することができる。

▲ビーチコーミングでの戦利品。いいぐあいに波にもまれてカドの取れた陶片やハート型の石。流木の板木も絶妙な雰囲気である。

▲奄美で見つけたお気に入りのポスター。魚を美しく配置している

奄美大島は世界自然遺産への登録が目前である。これから、さらに観光に舵を切っていくに違いない。奄美の自然を少しでも長く残していくために、私たちにできることを考えながら、伝えていきたいとしみじみ思った奄美での短い滞在だった。

最後まで読んでいただきありがとうございました。 (淵上冴己)

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