活車えび宇検養殖株式会社

宇検だより

鹿児島 ~ 東京 新幹線の旅

2019-08-29

所用があって東京に行ってきた。鹿児島から東京に行くといえば、このご時世、ふつうは、飛行機の旅を思い起こさせる。いつもはそうなのだが、今回は新幹線を使うことにした。鹿児島中央駅から新大阪駅まで4時間と少し、乗り換えて東京駅までは約3時間。計7時間である。飛行機なら1時間半くらいである。

旅行代理店に赴いた。新幹線で、と聞いて、カウンターの女性が「え~っ!」と驚いた。アンタがビックリしてどうする。こちらは正気だ。驚いた人がもう一人いた。友人で、国鉄・JR九州のOBである。出発当日、たまたま駅で出会った。「疲れますよ。」と宣う。アンタがそんなことを言ってどうする。友人は、謙遜と感謝の気持ちで、わざわざ、そういう表現を使ったのだ。鉄道を愛してやまない男なのだ。一方、留守を務めたえびおばさんは、呆れながらもさして驚かなかった。えびおじさんの奇癖は織り込み済みなのである。

7時間が長いか、短いか。飛行機と比較すると結論はおのずと出てくる。しかし、えびおじさんの若い頃は在来線の特急で東京まで23時間かかった。まる一昼夜を列車の中で過ごすのである。飛行機が高嶺の花だった時代である。今の7時間など、23時間に比べたらモノの数ではない。えびおじさんは時間への耐性がついているのだ。いや、えびおじさんに限らず、昔の日本人はそうだった。

7時間を過ごす極意は3つと心得る。呑むか、読むか、眠るか、である。もうひとつ言えば、沿線の風景を眺めることだ。これは、飛行機もかなわない。博多のビル街、瀬戸内海に臨む工場群、京都の東寺など。残念、富士山は眠りの中だった。そして東京駅に近づく。並行して走る電車たち。新幹線のちょっとした優越感。都会の匂い。

呑む、は、ビールを楽しんだ。九州新幹線は車内販売をやっていないが、山陽新幹線に入ると、さっそく車内販売のワゴン車がやって来た。かわいいお嬢さんだった。朝から呑むのは気が引けるが、人に会う夕方までには酔いも醒めているだろう。車両には客があまり乗っていず、だれも何も買いそうになかった。売り上げが少なかったら上司に叱られて辛い思いをするに違いない、という老爺心(?)が働いたのも事実である(笑)。新幹線のスピードに乾杯、などと、訳のわからないことをほざきながら缶を干した。ビールは朝でも美味いということを実感した。酔って眠ってしまったから、読む、の方はあまり進まなかった。想定内というべきか。

300キロ近いスピードでの、目くるめく風景の展開が脳に刺激を与えてくれるのか、様々なアイデアが湧いてくる。愚にもつかない自分なりの考えごとだが、次々に出てくるのがおもしろい。

いつか、著名な音楽家が、自分の思いがまとまらないときには、用もないのに、わざわざ電車に乗るとコラムに書いていたのを思い出した。おこがましくも、その感覚が理解できる。脳に刺激を与えるのが、視覚の作用に基づくものか、それとも、レールに刻む心地よいリズムのおかげなのか分からない。

1000キロの速度の飛行機の場合は新幹線の3倍の量のアイデアが出てくるのだろうか。しかし、この場合は風景が存在しない。雲と青空だけだ。雲でアイデアが出てくるか。雲を掴むような話である。しかし、雲をギュッと握って、アイディアという水を絞り出す天才がいるのかもしれない。

東京での用事を済ませて、翌日、帰りの新幹線に乗る。途中、何度か在来線に乗り換えて、さらにゆっくりと風景を味わった。品川~静岡、名古屋~新大阪の区間である。前者は車窓から湘南などのリゾート気分に浸れる。後者は、戦国時代の合戦の舞台となったところが多くあり沿線に中世の空気が漂っている。写真は、途中下車した、東海道本線・大垣駅の構内のようすだ。コインロッカーに戦国武将の家紋がデザインされている。現代と中世のおもしろいマッチングだ。

列島縦断。えびおじさんの短い夏休みは終わった。   (文:えびおじさん)

 

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