活車えび宇検養殖株式会社

宇検だより

酒の季節

2018-07-25

ドラゴンフルーツの花と赤い実。月下美人と同じく、花は一夜限り。

宇検村に豊年祭(ほうねんさい)の季節がやって来る。以前も書いた通り、豊年祭は敬老会と相撲大会を併せ持った伝統的な祭りである。各集落には必ず立派な土俵と広場がある。豊年祭は集落を挙げて盛大に行われる。年間を通じての最大の祭りであり、集落民の一番の楽しみでもある。なかには、これを目当てに島外から帰省する出身者もいる。弊社の人間も大勢参加する。

祭りには酒がつきものである。祭り当日に酒を飲むのは当たり前のことだが、宇検集落の若者たちは、前々日・前日の、土俵の整備やテント張りの準備の段階から酒を飲むのである。準備がうまくいったと称しては飲む。本番中はもちろんのことである。踊りながら、相撲を取りながらである。祭りが終了すると、今度は、打ち上げと称して飲む。翌日は、朝から、あと片づけなのだが、これがまたワイワイと楽しいらしい。終わったあと、反省会と称して酒が入る。これで、都合、3~4日間、飲み続けることになる。若者たちは徹底して祭りと酒の相性(あいしょう)を研究し追求する。祭りの季節は酒の季節でもあるようだ。残念ながら研究論文はまだ完成していない。いまだに、研究途上のようである。

確かに、体を使ったあとの酒はうまい。私自身の経験でも、スポーツのあとは、いつもよりもたくさん、しかもスムーズに入っていく。サラリーマンはふだんあまり運動をしないが、昼間、勤務時間に肉体活動を取り入れれば、夕方の焼き鳥屋での酒量は格段に伸びるだろう。上司の悪口という、つまみがなくても、酒がうまいはずだ。

奄美で飲まれる酒は主としてビールと黒糖焼酎だ。季語辞典によるとビールは夏の季語である。黒糖焼酎などの焼酎類はというと、これも夏である。焼酎は温めて飲むことが多いから、どちらかというと寒い季節のものかと思っていた。「夏の暑さの疲れを取る」との意味合いのようだ。しかし、私は、季語に左右されることなく、年中、その旬(しゅん)を楽しんでいる。

疲れを取ったり、暖を取ったり、はたまた、嫌なことを忘れるためだったりと、酒にはずいぶんお世話になるのだが、その効用はほかにもまだある。人と人との媒介役を果たしてくれることである。職場の同僚に限らず、集落の知り合いとも飲むことがよくあるが、例えば、集落の初対面の人たちとも、酒の席では、たちまち仲良くなる。まるで、百年の知己(ちき)の如くである。飲みながら、集落の人はいろいろなことを教えてくれる。集落の歴史、畑の様子、魚の種類や釣り方などを、詳しくである。酒のおかげで、心がつながって会話が密になっていく。昼間の会話で足りなかった話が、酒のおかげで補完され、話の中身が完璧なものになっていく。本当だろうか?

こんな話もある。ある会社の社長が、社業順風の要因、とりわけ、従業員全員が情報を共有して連絡ミスがないことを、外部の人から問われて「ウチは、毎晩、皆一緒に飲んでいますから」と笑って応じたという。もっとも、朝になって忘れてしまったら、元も子もないのだが。

肉体労働に縁遠くなってしまった私のように、決して若くない者には、風景を楽しみながらの酒で十分である。この写真は、昨年の夏の一枚である。場所は、宇検集落の入り江に面した友人の家である。庭に縁台が備えられている。海を眺めながらのひとときである。夏の昼間の酒は一瞬にして体を駆け巡る。かなり、酔ってしまった。大いに反省である。しかし、この風景に臨んで、酒を飲むことを触発されない酒飲みがいたらお目にかかりたいものである。(文:堀之内)

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