活車えび宇検養殖株式会社

宇検だより

歳を取ると

2018-01-12

年が明けてまたひとつ歳を重ねた。歳を取ると困ることはたくさんあるが、最たるものは記憶力の劣化ではなかろうか。「覚えられない」「思い出せない」「忘れる」。自分の記憶力の衰えをアピールする私のキャッチコピーだ。自慢することではないのだが。

記憶力がこれほど衰えるとは想像もしなかった。ここ数年、特に顕著だ。若い頃には、思い出せなくとも何となくもやもやしたものが喉にまで辿り着いていた。時間をかけると、そのもやもやが形となって、なんとか口をついて出てきたものだ。今は、もやもやしたものが見当たらない。

すでに名刺交換した人の名前を、本人を目の前にして思い出さないことが往々にしてある。そういう時は、得意の笑顔作戦でなんとかその場を凌ぐ。これは、というアイデアが浮かんだら、すぐにメモを取る。こういったヒラメキは、瞬間の電流みたいなものだという。もう一度やって来るだろうという期待は、たいていは虚しい結果に終わる。今や、恥も外聞もなく、「記憶より記録」だ。これから先、記憶力を試す試験を受けるようなこともないだろうから。

鹿児島県の新しい市町村名をいまだにきちんと覚えていない。平成の大合併以前は、鹿児島県には96の市町村があった。それなら今でも言える。すいすいだ。どこにあったかも地図で指し示せる。ところが、合併して43市町村になった。半減した。しかし、どことどこが一緒になってどういう名前になったのか、いまだ私の頭には馴染んでいない。私がもうすこし若ければ問題なく覚えたのに。

余談ながら、合併してそれぞれ名称が成立した南九州市と南さつま市が、薩摩半島の中にあって隣り合わせだ。瞬間、私は立ち止まる。どっちがどっちだったかな?と。実際、訪ねてみると、土地柄も違うし、歴史や風景、特産物もそれぞれに異なる。個性的だ。しかし、外から眺める分にはその際(きわ)が分かりにくい。その差異を示すのが名前でもある。中学の美術で習った色環(しきかん)で、反対側にある色は補色(ほしょく)関係にある。お互いを引き立てあう。でも、地理的関係では、隣同士のほうがお互いを引き立てあうのではなかろうか。お互いが個性の立つ名前なら私にとっては覚えやすかったのかもしれない。

記憶力に限らず、体力・気力も衰える。これは言わずもがなだ。

歳を取っての唯一のメリットは、判断力が増すことだと聞いた。ただし、それも自分の経験した範囲内でのことだ。その経験をもとに、ただ、ひとつ言えることがある。「歳を取ったらこのようになってしまうから、脳みそが柔らかいうちに、しっかり本を読み勉強をしておけ、息子たちよ。」である。(文:堀之内)

 

 

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