活車えび宇検養殖株式会社

宇検だより

フィンガーライムに魅せられて

2017-10-23

阿室集落

数年前、「リスボンに誘われて」という映画があった。ポルトガルの首都リスボンを背景にした上質のミステリー映画だった。ストーリーもさることながら、リスボンの美しい街並みが印象に残った。ある日本の作家は、リスボンを、世界で一番美しい街と評している。

さて、宇検村には、「フィンガーライム」に魅せられて、それを栽培しようと、本土から移り住んだ夫婦がいる。「フィンガーファイブ」ではない。それは沖縄だ。「007のゴールドフィンガー」でもない。「フィンガーライム」である。

「フィンガーライム」はオーストラリアを原産とするライムだ。日本ではまだそれほど一般的ではない。私(堀之内)もラジオやネットで知った限りだ。普通のレモンやライムとは形・大きさが異なり、それこそ人の指のような形をしている。HPで探すと「フィンガーライムはオーストラリアの原産。光沢の美しさとともに食感がキャビアに似ていることから森のキャビアとも言われる」と書いてある。つぶした時のライムの香りが素晴らしく、つぶすときの感触もおもしろいらしい。

この夫婦は、後藤義仁(よしひと)さんと奥様の恭子(きょうこ)さんだ。義仁さんは愛知県一宮市出身、恭子さんは鹿児島市の出身だ。2人が知り合ったのはアメリカでの農業研修だ。

2人は宇検村の阿室(あむろ)集落に12年前に移り住んだ。2人の子供に恵まれ、「スミューファーム」という農園を経営している。「スミューファーム」の「スミュー」とは、「パンダ鴨」のあだ名もある「ミコアイサ」の英語名だ。「smew」である。「パンダ鴨」の愛らしい姿がお気に入りなのだ。

山の裾野にある温室と畑でフィンガーライムを栽培している。フィンガーライムにはいくつかの種類があり、この農園では、現在、13品種・100本を栽培している。探究心あふれる2人は、2年前にはオーストラリアまで実地研修に出かけ、具体的な栽培のコツを学んできた。

恭子さんは、フィンガーライムの魅力を次のように語る。「折ったときに、中の粒粒が飛び出してきて、見た目が楽しい。噛んでみると、とびっこ(トビウオの卵)のような食感があり、穏やかな酸味と香りが素晴らしい。カクテルに入れて楽しんだり、変わったところでは、寿司のネタの上に載せたりしても面白い。」残念ながら、私がおじゃました時にはフィンガーライムの収穫は終了していて、お目にかかれなかった。来年を楽しみにしたい。

奄美大島は温暖な地である。ほとんどの人が「霜を見たことがない」と言う。雪は、昨年、115年ぶりに降った。ちょっとした騒ぎだった。こういった暖かさのためか、本土では栽培がなかなか難しい熱帯作物が耕作可能だ。後藤さん夫婦は、フィンガーライム以外にも、私たちが、通常、見かけるレモンやアボカド、スターフルーツなどの作物を育てている。守備範囲はフィンガーライムに限らないのである。栽培本数は、フィンガーライムを含めて計300本に及ぶ。熱帯の果樹はすべて網羅していこうと気合が入っている。

自然に寄り添うかたちで作物を育てたいと、肥料、農薬は一切使わない。肥料をやり過ぎた果実は、ちぎってそのまま置いておくと徐々に腐っていくそうだ。そうでない果実は、そのまま萎びていくだけという。なんだか、わたしたち人間の在りよう・生き方にも示唆を与えているような話だ。

6次産品化にも熱心だ、南西諸島特有の「ボタンボウフウ」や「島にんにく」を原料にしてソースを作り始めた。都会のレストランで評判が良いようだ。弊社のPRも兼ねて言わせていただけるなら、このソース、「ボイルえび」との相性がことのほかよろしいのだ。一度、お試しあれ。

恭子さんは「台風常襲地帯のため、苦労することもある。フィンガーライムは、まだ日本で栽培が確立されていないため参考例がない。手探り状態だが、オーストラリアで見た広大な農場をめざし、フィンガーライムを中心とした熱帯果樹園を作っていきたい」と語る。

二人三脚の農業人生だ。夫の義仁さんは、農業の傍ら「奄美マングースバスターズ」に所属して、外来種マングースの駆除活動に取り組んでいる。このお話は、いずれまた、伺いたい。    (文:堀之内)


後藤さん夫妻

フィンガーライムの生長を見守る

スターフルーツ

レモン

斑入りレモン(葉っぱだけでなく、実の表面にも斑が入るとのこと)

ティーツリー


以下は、後藤さんのオーストラリア研修の写真から。フィンガーライムと広大な農場。

 

 

 


<追伸>
この原稿を書き終えた翌日(10月19日・木曜日)、地元の南日本新聞に次のような記事が掲載された。

農林水産省が主催する「2017年度の農林水産祭むらづくり部門」で、宇検村の阿室校区活性化対策委員会が天皇杯を受賞した。親子山村留学や耕作放棄地の再生、特産品の開発が認められた、と書いてある。

この委員会の会長は、後藤恭子さん本人である。後藤さん夫妻始め、阿室校区活性化対策委員会の皆さんのますますの発展を祈念したい。

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